舞台袖レポート 更新情報
羅い舞座グループ弁天座 2024年7月8月 二ヶ月公演
「浪花劇団」舞台袖レポート
2024年7月25日 13時32分06秒
舞台袖レポートでは、楽屋や舞台袖など客席からは見えないところでの劇団の奮闘ぶりをお届けしています。
今回は、羅い舞座グループ弁天座で7月8月 二ヶ月公演中の浪花劇団の皆さんに密着しました!
(2024年7月5日取材)
■開演1時間前
「おはようございまーす」
楽屋にお邪魔すると
「暑ッーーー!!」
みなさんの叫び声が(主に浪花(なにわ)めだかさん😆)
それもそのはず、今日は全国各地で記録的な猛暑日。
いよいよ夏本番。
大衆演劇にとって1年で最も過酷な季節。
しかし、そこは元気印の浪花劇団の皆さん。
楽屋には酷暑も吹き飛ばす元気なムードが溢れていました♪
舞台上はお芝居の大道具がセッティング済み。
背景幕は劇団のもの。
実はこれには、ちょっとした仕掛けがあるのです。
近江新之介(おうみ しんのすけ)座長
「ふすまの部分はマジックテープで留めてあって、必要に応じて外せるんです」
ぺリッと
と、こんな感じ。
なるほど、ここを外すと入り口として使うことも可能ですね。
お稲荷さんもマジックテープ。
1枚の背景幕で、色々な場面に使えるように工夫されているのでした。
「舞台8割、役者2割という言葉がありましてね」と、近江新之介(おうみ しんのすけ)座長。
きちんとした舞台を見せたいという思いから、舞台道具を自分たちでも製作しています。
今回は、浪花劇団ならではの舞台道具に注目しながら、お芝居の模様を追っかけたいと思います^^
開演30分前。
客席に神楽の音楽が流され、
「ちゃくとー!」
太夫元・三枡(みます)ゆたかさんがアナウンスしました。
『ちゃくとう』とは『到着』のことで、役者が揃ったことを告げる意味があるそう。
気持ちが引き締まりますし、かっこいいですよね。
こんな昔ながらのしきたりを守り続けておられることに、感動を覚える取材班でした。
お芝居の立ち回りの稽古が始まりました。
左から、三枡ゆたかさん、浪花(なにわ)こはるさん。大河一心(たいが いっしん)若座長。
楽屋に戻って、化粧前を順番に見て参りましょう。
浪花(なにわ)こころさん17歳。
今日はヒロイン仏一家の娘・おえい役です。
こころさんは剣戟はる駒座の津川祀武憙(つがわ しぶき)座長の大ファン。
今日も化粧前は祀武憙グッズでいっぱいでした😍
祀武憙グッズとともに置かれていた手話の本。
こころ「昨日届いたばかりなんです」
めだか「テレビドラマに感化されて取り寄せたんですよ〜」
いつかこころさんの手話舞踊が観られるかも!
こころさんの隣に、大河一心若座長、19歳。
「これ、撮ってください!」
手に持っているのは大きなパフ!
デッカッ!!
「いいでしょう、ドンキで見つけたんです」と若座長。
パフパフパフっと、3パフくらいで白粉が塗れそうですw
ご覧いただいた役者の皆様、いかがでしょう?!
「こっちも撮っておいてください」
若座長が指す先には、1枚の写真が。
若座長の大伯父にあたる浪花三之介(なにわ さんのすけ)さんに抱っこされているのが若座長。
1歳になるかならないかの頃だそう。
可愛いですね〜
三之介さんも嬉しそう。
化粧前にはその人の大切なものが溢れていますね。
そのお隣は、浪花めだかさん。
今日のお芝居は、こんな顔の役です↓
確か前回の取材の時もこんなメイクだったような…
「まあ、だいたいこんな役ですねー笑」
そんなめだかさんの大切なものは、同じく1枚の写真
新之介座長……
に、抱っこされている、生まれたばかりの頃の次男坊・浪花小福(なにわ こふく)ちゃんでした❤️
「ずっと小さいままでいてほしいです笑」と、めだかさん。
小福くんも、現在小学2年生。
ただいま登校中で、お昼の部の終わり頃に帰ってくるそう。
そして舞台袖に一番近いところに、近江新之介座長。
今日のお芝居は仏一家の親分で、おえいの父親役。
座長「今日のお芝居『男の情話〜千里の虎』は、うちの劇団では昔からやっているお芝居です。
主人公は仏一家の代貸のトラで、ラストシーンが印象的ですが、僕としては、このお芝居は親子の情愛がテーマですね」
座長がかぶる鬘を手入れするめだかさん。
「白髪はどうしてもほつれてくるんで」
丁寧に梳かれた鬘をかぶって、完成です。
音響ブースには化粧を終えた浪花(なにわ)しめじさんがスタンバイ。
しめじさんは浪花劇団に入団して10年以上。
今日は、閻魔一家の身内と、料亭の板前の2役です。
普段は照明を担当している次女の浪花(なにわ)こはるさんも、今日はお芝居に出演。
料亭の仲居さんと、閻魔一家の身内の2役を演じます。
「今日お芝居に出てまーす!」
座長のインスタで宣伝。
とっても可憐な仲居さんです。
そして今日の主役、仏一家代貸・トラを演じる若座長。
全員支度万端で時計はジャスト12時。
「いらっしゃいませ、いらっしゃいませ…」
めだかさんのアナウンスで
開演です!
■第1部 お芝居「男の情話〜千里の虎」
仏一家の親分は、一家をたたんで堅気になると、娘のおえいに話す。
それに対して納得できない代貸のトラ。
おえいに告白するも、頑なに拒否されてしまい……
腕も立ち、義侠心あふれるトラだが、酒好きで不器用なところが玉にキズ。
そんなトラに、おえいの弟で一家の若親分・マンちゃんだけは、優しく接してくれるのだった。
ここで場面転換。
背景幕が取り払われ、その後ろにセットされていた二重の登場。
第2場は堅気になってからの仏一家の佇まい。
二重だけでなく、舞台下手に植え込みと木の塀が備え付けられます。
大きな道具をたくさん出すのは大変ですが、
出来るだけ立体感のある舞台を見せたいという、座長のこだわりです。
堅気になった親分。着物も着替えます。
第2場 その後の仏一家
やくざから足を洗い、堅気の商売を始めたものの、うまくいかず…
借金の証文が閻魔一家の手に渡り、理不尽な利息をつけられてしまう。
借金の取り立てに来る閻魔一家の親分(三枡ゆたか)。
ゆたかさんが舞台に出ている間、音響につくめだかさん。
音響担当のマンちゃん、可愛いですね^^
借金を返すため、おえいは芸者奉公に出ることに。
料亭ひさご屋から板前が迎えが来る。
父が娘のために出来ることは、せめて髪を梳いてやることくらいだった。
スポットだけの演出。二人の心情を浮き彫りにします。
再び舞台転換。
襖を取り替え、貧世話から料亭にします。
さっきと同じ木戸でも、ちょっとした装飾をつけることで、家の造りを立派に見せます。
第3場 料亭ひさご屋
おえいを訪ねてくるマンちゃん。仲居さんが取り次ぎます。
一緒に帰ろうと駄々をこねるマンちゃんに、ぼた餅を持たせ、なだめるおえい。
仲居役を終えたこはるさん、今度は閻魔一家の身内に変身。
このお芝居はめだかさんとゆたかさん以外、全員着替えがあって大忙し。
さあ、最後の場面転換。
料亭から閻魔一家へチェンジ。
屋根をつけて
悪役の家らしく、龍の襖に仕替えます。
舞台下手に松を置いて、先ほどの木塀を裏返して、黒塀に。
いかにもお金持ちの家らしくなりました。
このリバーシブルの黒塀は、劇団持ちの道具。
折りたたみ式で、畳めるようになっている優れものです。
大詰め 閻魔一家
トラが閻魔一家に殴り込み!
トラの書き置きを読む仏の親分とおえい。
トラの声は、二人に聞こえただろうか……
いたわり合う父と娘、それを陰で支えるトラ。
切ない幕切れなのですが、
トラのことが大好きなマンちゃんの存在に、少しだけ救われる思いです。
不器用な男の生き方と、親子の情愛が織り込められた、浪花劇団らしい人情劇。
「チョン、チョン、チョンチョンチョンチョン…」
お芝居の終わり、柝を打つ座長。
SEの機械音ではなく、木の優しい音が耳に心地よいです。
片付けと並行しながら、座長による舞台口上。
前売り券販売に向かう支度をするしめじさん。
黒幕の後ろで、舞踊ショーで使うブラックステージをセットします。
ショーではこちらが大活躍!
浪花劇団の舞踊ショーでは、背景をプロジェクターで映し出します。
こちらは、映像ソフトがインストールされたパソコンと、専用のコントローラー。
「最近の機械って、トリセツが無いでしょう。
まず僕が手探りで使い方を覚えて、皆に教えます」と新之介座長。
背景も要チェックで、舞踊ショーレポートへと続きます!
■第2部 歌と踊りのバラエティショー
幕開けトップは若座長。
白いドレス着物で、小粋な女形舞踊。
映像のコントローラーを操作するしめじさん。
「踊ってきまーす」
出番前、インスタグラムのストーリーをアップする新之介座長。
客席から登場。
「はい、拍手〜」
お茶目な座長にお客様も乗せられます。
女形から立役へ化粧替え。
「女形から立役になる時、僕は化粧全部落として一からやりますね。
白の上から塗るのではなく、ちゃんと肌色にしたいので」
シンプルな化粧を心がけているからこそ、基本に対するこだわりです。
歌うめだかさん。
まるみのある声に、圧倒的な声量。
胸の奥まで響きます。
群舞「涙唱」より浪花しめじさん。
スラリと伸びた手足
中性的な雰囲気で勇壮な舞踊。
立役の若座長。舞台に行く前に香水を手のひらに一振り。
こちら若座長の香水。
若座長「無くなりそうな香水の瓶、撮られてしまった(笑)」
これを見た親切なお方がプレゼントしてくれるかも…笑
座長立役の個人舞踊。
曲に合わせて背景が変わり、映像と人が一体に。
座長と若座長の相舞踊「竹とんぼ」
さすが親子、息ぴったりです。
こころさんの個人舞踊。
実年齢より上に見られることが多いというこころさん。
「よく二十歳以上?って言われます」
確かに、こんな落ち着いた舞踊を見たら20歳以上に思われるのも納得です。
さて、いよいよラスト舞踊間近。
母・めだかさんに「へへー」と、かしこまる若座長の図。
若座長「これがうちの劇団の楽屋の日常です」
めだか「ウソですw」
ラスト舞踊「千本桜」
お揃いの紫の裃袴で厳かに
力強く
幻想的に
最後はビシッと。
浪花劇団歌と踊りのバラエティショー、
これにて終演!!
終演と同時に、小福くんが学校から帰ってきました。
「おかえりー」
「お客さんに挨拶して」
楽屋に戻ってきた小福くん。
カメラ目線いただきました。
「見て見てー、こんなん出来るねん」
足を開いて床にペター。
身体、やらか!
みなさんがお見送りに行っている間、
色々特技を披露してくれる小福くんでした^^
「お疲れ様でしたー」
お見送りから戻ってきたみなさんをパシャ。
浪花こころさん
浪花しめじさん
浪花めだかさん
大河一心若座長
近江新之介座長
記録的な猛暑の中の公演でしたが、みなさん元気いっぱい。
暑さに気をつけて、2ヶ月公演無事乗り切られますように!
■近江新之介座長メッセージ
初めての2ヶ月公演で、いろいろな意味で楽しみです。
イベントのお知らせとしては、7月14日に若座長の2周年、
28日に僕の誕生日公演をやらせていただく予定です。
いい劇場なので、お値段以上の舞台が見ていただけると思います。
夏休みに入れば子役を使ったお芝居もやりますので、
ぜひお楽しみにお越しください!
■浪花劇団プロフィール
関西を代表する歴史ある劇団。
平成17年(2005)8月、大阪市の朝日劇場で近江新之介が座長を襲名。
若手中心の幅広い舞台を繰り広げるほか、
子役を使った芝居に取り組むなど、さらなる躍進を続けている。